災害時のクレジットカード|支払い猶予・再発行・信用情報

災害時のクレジットカードの支払い猶予・再発行について解説するサムネイル 安全・トラブル対応

災害時、カード会社には「支払い期日の猶予」「再発行手数料の免除」「信用情報の取り扱いへの配慮」という制度が用意されています。ただし、これらの制度は自分から連絡しないと届かない部分があるため、知っているかどうかで受けられる救済に差が出ます。この記事では、クレカ業界15年以上の現役社員として与信管理・Webマーケティングを担当してきた立場から、災害時にカード会社の中で実際に何が起きているのかを解説します。

この記事でわかること

  • 災害時にカード会社が用意している3つの救済策
  • 自動で届く部分と、自分から申し出ないと届かない部分の違い
  • 災害発生当日、カード会社の中で実際に起きていること
  • 電話1本で伝えるべき3つのポイントと、平時にできる備え

カード会社には災害時だけ動く仕組みがある

救済策 内容 届き方
支払い期日の猶予 今月の請求を翌月以降に回す、分割にして負担を薄くするといった調整を相談できる 申し出が基本
再発行手数料の免除 財布ごと失った、家が被害を受けてカードが見つからないといった場合に、通常発生する手数料を取らない扱い 申し出が必要
信用情報への配慮 災害救助法が適用された地域について、信用情報機関から加盟会社に取り扱いへの配慮が周知される 地域単位

信用情報については、CICやJICCといった信用情報機関が実際にこうした案内を出しています。被災が原因の遅れを、通常の延滞と同じようには記録しない扱いです。ただし取り扱いは機関や会社によるため、「絶対に記録されない」とは言い切れません。

そもそも信用情報にどのような記録が残ると審査に影響するのかは、クレジットカードのブラックリストとは?載る6つの理由と抜け出す方法で解説しています。

なぜこうした仕組みがあるのかというと、カード会社にとっても被災した方に無理な回収をかけることに意味がないからです。生活の再建が進まなければ、その後の支払いも続きません。長く付き合ってもらうほうが、会社にとって合理的な選択なのです。

与信管理をしていた際、大きな災害が起きるたびに社内に特別対応の案内が共有されていました。対象地域、対象となる会員の条件、猶予できる範囲、窓口での応対方針などが緊急で全社に回り、関係部署が目を通します。災害のニュースを見た数日後に、その地域名が書かれた社内文書を読むという経験を何度もしてきました。

まずは「救済策は存在する」と知っておくことが、最初の一歩になります。

救済が届く人と届かない人を分けるのは「自分からの申し出」

制度が同じでも、届き方には2種類あります。

救済が届く2つのルート

自動で適用される

登録住所・勤務先の「地域」で線を引ける部分だけ

  • 被災地域の会員全体への一律猶予
  • 災害救助法の適用地域での信用情報の配慮

申し出ないと届かない

カード会社が自動では把握できない個別事情

  • 取引先が被災して入金が止まった
  • 別居の家族が被害を受け出費が増えた
  • 避難していて手元にカードがない

この差を知らずに待っていると、支払期日が来てしまいます

1つ目は自動的に適用される部分です。災害の規模や会社によっては、地域を指定してその地域の会員全体に支払いを1〜2か月猶予する対応が取られることもあります。過去の大規模災害では、大手カード会社が被災地域の会員に一律の対応を行った例もあります。

ただし、自動対応の範囲は限られています。自動で適用されるのは、登録されている居住地や勤務先の「地域」で線を引ける部分だけです。取引先が被災して入金が止まった、別居している家族が被害を受けて出費が急に増えた、避難していて手元にカードがない、といった個別事情に応じた措置は、申し出が前提になります。

なぜかというと、カード会社は「誰がどれだけ被災したか」を自動では把握できないからです。持っている情報は、住所・利用履歴・支払い状況の3つが中心です。住所が被災地域にあることは分かっても、その方の家が無事なのか、勤務先が動いているのか、今どこに避難しているのかまでは分かりません。同じ町内でも被害の程度は家ごとに違います。地域一律でカバーできるのは、あくまで「最大公約数」の部分だけなのです。

与信管理の実務で見ている画面には「支払いが遅れている」という事実は表示されますが、その理由までは表示されません。被災が理由の遅れなのか、単に口座への入金を忘れたのかは、記録が残っていなければ区別できないのです。逆に、本人から一報があって記録が残っていれば、その状況を踏まえた個別対応を検討できます。

カード会社が日頃どのような利用を評価しているかは、クレジットカード会社が優良顧客と判断する使い方5選にまとめています。

つまり、待つのではなく自分から連絡することが重要です。「そのうち案内が来るだろう」と待つより、一報を入れたほうが確実ですし、連絡した記録が残ること自体に意味があります。

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災害が起きた日、カード会社の中で「止まるもの」がある

災害当日、カード会社の中で動くもの/止まるもの

立ち上がるもの

  • 対象地域の特定(救助法の適用地域)
  • 問い合わせ窓口の人員増強
  • 災害専用フリーダイヤルの開設
  • 公式サイトへの特別措置の告知

その日のうちに止めるもの

  • キャンペーンメールの配信
  • アプリのプッシュ通知
  • 対象地域向けのWeb広告

確認すべきは、SNSではなく公式サイトの案内です

災害発生時、カード会社の中ではいくつかのことが立ち上がります。まず対象地域の特定です。どのエリアの会員が影響を受けるか、災害救助法の適用地域はどこかを確認したうえで、特別対応の方針が固まります。同時に問い合わせ窓口の体制強化も進みます。応対人員を厚くする、災害専用窓口を別に設ける、専用フリーダイヤルを立ち上げて公式サイトに掲出することもあります。

Webマーケティングをしていた際、災害が発生した日はまず配信予定の確認から始まりました。その週に送る予定だったキャンペーンメール、アプリのプッシュ通知、Web広告の配信設定を一つずつ洗い出し、対象地域向けの配信を止める判断をその日のうちに行います。理由は単純で、避難所にいる方のスマートフォンに「今なら〇〇%還元!」というプッシュ通知が届いたらどう感じるか、という視点です。配慮に欠けるうえ、その方が今必要としている情報ではありません。配信停止は時間との勝負でもあり、メールの配信予約が翌朝に入っていれば、その日のうちに止めなければ間に合いません。地震の一報が入った夕方に担当者が配信管理画面を開き、対象地域の設定を除外していくという作業が、災害のたびに行われています。

一方で止めないものもあります。公式サイトやアプリでの特別措置の告知です。むしろ急いで出します。トップページに災害時の案内を掲出して専用窓口の番号を載せる作業も、同じ日に並行して進みます。

災害が起きたら、利用中のカード会社の公式サイトやアプリを一度確認してください。特別措置の有無、専用窓口の番号、必要な手続きが多くの場合そこに載っています。SNSで流れてくる情報より、公式の案内のほうが確実です。

電話1本でできること。窓口で伝える3つのこと

手順1:連絡先を確認する
基本はカード裏面の問い合わせ番号です。災害時は専用窓口が設けられることもあるため、公式サイトを見られる状況ならそちらを先に確認するとスムーズです。カードが手元になくても、公式サイトから電話番号は分かります。

手順2:状況を伝える
伝えるのは3つです。①被災した地域に住んでいること、②支払いが難しい、または難しくなりそうな状況であること、③カードが手元にあるかどうか。「詳しく説明できないと相手にされないのでは」と心配する必要はありません。罹災証明書などの書類は後から求められることはあっても、最初の電話で揃っている必要はないのが一般的です。まずは電話をつなげることが先です。

手順3:案内に従って手続きする
猶予の相談なのか再発行なのかで進み方が変わります。カードを紛失した場合は、まず紛失の届出をして利用を停止し、それから再発行の手続きに入ります。「盗難ではなく災害で見つからないだけ」というケースでも、届出をしておいたほうが安全です。第三者に使われた場合の補償の話にも関わってきます。

カード番号が券面に印字されていないナンバーレスカードの場合、番号の確認方法はカードによって異なります。タッチ決済は危険?ナンバーレスカードの裏側もあわせてご確認ください。

被害が軽くて通常どおり支払えるなら、無理に相談する必要はありません。ただし、少しでも生活や収入に影響が出ているなら、遠慮する必要はまったくありません。窓口はそのために用意されています。

「今月は厳しくなりそうだ」と思った段階で、早めに一報を入れることをおすすめします。延滞になってからでも相談はできますが、期日前に連絡したほうが選べる選択肢は多くなります。

なお、当座をしのぐ手段としてキャッシングを考える方もいます。その前に、自分のキャッシング枠がカード会社からどう扱われているかを知っておいてください。

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平時の10分でできる3つの備え

災害時に何が起きるかを、具体的に想像してみてください。停電が続いてスマートフォンの充電が切れる。カード会社のアプリは開けない。連絡先はアプリの中にしか入っていない。あるいは避難のときに財布ごと持ち出せなかった。カード番号も問い合わせ先も手元にない。この状態では番号が分からず、連絡すらできません。

備え1:問い合わせ先をスマートフォン以外にも控えておく
紙のメモに書いて、通帳や保険証券と一緒に保管します。家族と共有しておくのも有効で、自分が動けない状況でも家族が代わりに連絡できます。

備え2:カード番号や会員情報を安全な形で把握しておく
紙に全桁を書いて持ち歩くのは盗難リスクがあるため推奨しません。下4桁とカード名、発行会社名だけでも本人確認の入り口になります。窓口では氏名・生年月日・登録の電話番号で確認できることが多いので、「どこのカードを何枚持っているか」を把握しておくだけでも違います。

備え3:災害時の特別措置について平時に一度目を通しておく
多くのカード会社が公式サイトに、災害時の対応方針を常設ページとして掲載しています。利用しているカード名と「災害時」の2語で検索すれば見つかることが多く、10分もかかりません。

連絡先の把握やアプリの登録は、クレジットカードが届いたらやること4選で解説した初期設定とあわせて済ませておくと確実です。

3つのうちどれか1つで構いません。今日のうちに、カード会社の問い合わせ先をスマートフォン以外の場所に控えてください。これが一番手軽で、一番効く備えです。

よくある質問(FAQ)

Q1. 災害で支払いが遅れると信用情報に傷がつきますか?
CICやJICCなどの信用情報機関は、災害救助法が適用された地域について取り扱いへの配慮を周知しています。被災が原因の遅れを通常の延滞と同じようには記録しない扱いです。ただし取り扱いは機関や会社によるため、絶対に記録されないとは言い切れません。

Q2. 罹災証明書がないと相談できませんか?
最初の電話の時点で書類が揃っている必要はないのが一般的です。書類は後から求められることがあっても、まずは電話をつなげることが先です。

Q3. 被害が軽い場合も相談していいですか?
通常どおり支払えるなら無理に相談する必要はありません。ただし、少しでも生活や収入に影響が出ているなら、遠慮する必要はまったくありません。窓口はそのために用意されています。

Q4. カードを失くしたが盗難ではない場合も届出は必要ですか?
必要です。「盗難ではなく災害で見つからないだけ」というケースでも、紛失の届出をしておいたほうが安全です。第三者に使われた場合の補償の話にも関わってきます。

まとめ

  • 救済策はあります。支払い期日の猶予、再発行手数料の免除、信用情報への配慮の3つです。ただし内容は会社によります
  • 届き方には差があり、個別事情は申し出が起点になります。待つより自分から連絡することが確実です
  • 災害当日は社内で対応方針と窓口体制が立ち上がり、対象地域向けの広告・キャンペーン配信は止まります。確認すべきは公式サイトです
  • 連絡は電話1本から。伝えるのは、被災地域に住んでいること、支払いが難しい状況であること、カードが手元にあるかどうかの3つです
  • 平時の備えは3つ。問い合わせ先の控え、カード情報の把握、特別措置ページの確認です

本記事の内容は、以下の動画でもより詳しく解説しています

著者:クレカの中の人|クレジットカード業界15年以上。審査・与信管理・不正検知・オーソリ業務・個人/法人営業・Webマーケティングを経験。貸金業務取扱主任者(国家資格)/FP技能士2級/クレジット債権管理士

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