クレカのグルメ特典はなぜ1名無料?仕組みと裏側を現役社員が解説

クレジットカードのグルメ特典で1名分無料が成立する仕組みを解説するサムネイル カードの選び方・使い方

この記事でわかること

  • 「1名分無料」のコース代金を、実際に負担しているのは誰か
  • グルメ特典には性格の違う2種類があり、契約の仕組みが根本的に違うこと
  • レストランが赤字覚悟に見える条件を引き受けている5つの理由
  • 「専用メニューが割高」「予約が取れない」が起きる仕組みと、カード会社側の是正措置
  • 予約前に確認すべき3つのことと、特典を使うべきタイミング

1名分の代金を負担しているのは、カード会社ではなくレストランです

高級レストランのコース料理が1名分無料になる。この特典が成立するのは、無料になった1名分の代金をレストラン側が負担しているからです。カード会社が肩代わりしているわけではありません。それどころかカード会社は、この特典を自前で運営してすらおらず、専門の代理店に利用料を払って委託している側です。

筆者はクレジットカード会社に15年以上勤務している現役社員で、個人営業・法人営業・審査・WEBマーケティング・オーソリ業務まで、カード発行に関わるほぼ全ての業務を経験してきました。グルメ特典は「なんとなくすごそうだが仕組みが分からない」と言われることの多い特典ですが、お金の流れを理解すると、使える日が限られている理由も、たまに出てくる割高な専用メニューの正体も説明がつきます。

グルメ特典には性格の違う2種類がある

年会費の高いゴールドカード・プラチナカード・ブラックカードには、基本的にグルメ特典が付帯しています。ただし、ひとくちにグルメ特典と言っても中身は2種類あり、契約の仕組みが根本的に違います。

①割引・1名無料型②ポイント優待型
特典の内容対象コースが1名分無料、またはコース料金の割引、ドリンクサービス対象レストランの利用でポイントが2〜10倍、ボーナスポイントの付与
企画・運営グルメ系の専門代理店や会員制レストランサービス会社に委託カード会社とレストランが直接契約していることが多い
代表的なサービス招待日和、グルメ・ベネフィット、エグゼクティブダイニング各社のポイントプログラムに付随する優待
今後の流れ委託が前提人件費と管理コストの観点から、外部委託へ移行する流れ

2名で予約して1名分のコース料理が無料になるということは、高級レストランのコースを実質50%オフで利用できるということです。インパクトが大きいのは割引・1名無料型ですが、ポイントプログラムによってはポイント優待型のほうが得になる場合もあります。

ここで押さえておきたいのは、ポイント優待型についても外部委託へ移行する流れが来ているという点です。運営がカード会社の手を離れれば、対象店舗や倍率の決まり方も変わります。いま直接契約で成り立っている優待が、同じカードを持ち続けていても数年後には内容が変わっている可能性がある、ということです。特典を理由に上位カードを選ぶなら、その前提で考えたほうが安全です。

なお、特典の原資を誰が出しているのかという構造は、クレジットカードのトラベル特典は本当にお得?仕組みと損しない判断基準で解説した内容とよく似ています。あわせて読むと、付帯特典全般の見方が整理できます。

カード会社は飲食店と直接契約していない

最初の裏話です。多くの方は「カード会社が飲食店と直接契約している」と考えていますが、①の割引・1名無料型については、一部の例外を除いて誤解です。

実際には、カード会社はグルメ系の専門代理店や会員制レストランサービス会社に利用料を払い、企画・運営を委託しているケースが大半です。カード会社がやっているのは、提示されたレストランについて「会員が使える内容か」「ブランドイメージに合うか」を見て採用するかどうかを決めること。カード会社は胴元ではありません。

例外が②のポイント優待型です。こちらはカード会社がレストランと直接交渉し、ポイントアップやボーナスポイントを付与してよいかを取り決めていることが多くなります。

もう1つ、混同されやすい点があります。券面に入っている「VISA」や「JCB」は国際ブランドであり、グルメ特典を付けているのは国際ブランドではなくカードを発行している会社です。同じブランドのカードでも、発行会社が違えばグルメ特典の有無も内容もまったく違います。この関係はクレジットカードの国際ブランドとは?7大ブランドの特徴・違いで整理しているので、カードを比較する前に押さえておくと選び間違えません。

なぜ「1名無料」が成立するのか

結論から言うと、レストラン側にもカード会社にもメリットがあるからです。そして繰り返しになりますが、1名分のコース代金を負担しているのはレストランです。

レストランがこの条件を引き受けている理由は、主に次の5つです。

  1. 原価はもっと低いため、1名無料にしても採算が取れる
  2. 平日は空席になることが多く、空席対策になる
  3. 上位カード会員という属性の良い新規顧客・リピーターを獲得できる
  4. カード会社のサイトに掲載してもらえるため、宣伝になる
  5. コース料理は無料でも、アルコールなどを注文してもらえればぎりぎり黒字になる

店側からすると、何もない日に空席が出るのが一番の損です。それなら確実に来店し、客単価も高いカード会員に来てほしい、という判断になります。

この5つを押さえると、クリスマスや年末年始、ゴールデンウィークにグルメ特典が使えない理由も分かります。黙っていても満席になる日は、空席を埋めたいという理由そのものが消えるからです。特典が使えないのは意地悪をされているわけではなく、レストランが引き受ける理由が消えているだけです。

1名分の代金は誰が負担しているのか

レストランが負担している

それでも引き受ける5つの理由

  • 原価率から見れば採算が取れる
  • 平日の空席対策になる
  • 属性の良い新規客とリピーターを取れる
  • カード会社のサイトに載り宣伝になる
  • ドリンクの注文でぎりぎり黒字になる

カード会社は負担していない

払っているのは代理店への利用料

  • 1名分のコース代は負担していない
  • 専門代理店に運営を委託し、利用料を払う
  • 見返りはLTV向上・加盟店手数料・新規入会

無料の原資はレストラン。カード会社は代理店に利用料を払って運営を委託している側です

「専用メニューが割高」「予約が取れない」の正体

グルメ特典についてよく寄せられる不満が、この2つです。どちらもレストランが引き受ける5つの理由のうち、どれが欠けたかで説明がつきます。

割高な専用メニューが出てくる場合

これは、レストランが通常のコースでは採算が取れないが、空席対策・新規顧客の獲得・宣伝効果は欲しいと判断したケースです。通常のコースでは1名無料にすると赤字になるため、採算が合うように特典専用のメニューを用意している、ということです。

ここが中の人として伝えておきたい実務の話です。この状態は放置されているわけではありません。カード会社は会員からのご意見や委託先からのフィードバックをもとに是正を進めており、極力通常メニューを用意するよう働きかけ、応じない場合は対象店舗から外すという措置も取っています。特典の内容がおかしいと感じたときに意見を出すことには、実際に意味があります。

予約が取りにくい場合

こちらは空席を埋める必要がなくなったケースです。テレビで取り上げられたりSNSで話題になったりすると、店側は宣伝を必要としなくなるため、特典枠の予約を絞ります。

対象店舗から突然なくなる場合

最近増えているのが、属性の良い新規顧客やリピーターが獲得できるという理由が崩れ、レストラン側から対象除外を申し出てくるケースです。ゴールドカードが当たり前になった昨今、上位カード所有者の属性も変化しており、当日ドタキャンする利用者や、横柄な態度の利用者、リピーターにならない顧客が増えています。

これが2つめの実務の話です。こうなるとレストラン側からクレームが入り、委託先と緊急の会議が設けられ、泣く泣く対象店舗から外すことになります。特典が使える店が減っていく背景には、こうしたやり取りがあります。

カード会社の狙いは3つ

ここからはカード会社側のリアルな話です。手数料を払ってまでグルメ特典を付ける理由は、次の3つに集約されます。

1. LTV(顧客生涯価値)の向上

LTVとは、ある顧客が取引期間を通じて企業にもたらす総利益を表す指標です。カード会社はこのLTVを上げるために投資をしており、グルメ特典もその1つです。

これが3つめの実務の話です。実際に社内で見ていると、グルメ特典の利用者は、利用額とカードの継続年数がいずれも高い傾向にあります。委託先に手数料を払ってでも付帯させる根拠は、ここにあります。

2. 加盟店手数料

飲食店は、公共料金やスーパーなど他の業種と比べて、決済時にカード会社が受け取る加盟店手数料が高い傾向にあります。グルメ特典の対象になるような店は比較的高級店が多く、単価も上がります。

記念日などの特別な場面でグルメ特典を使ってもらえれば、会員の中で「外食といえばこのカード」という結びつきができます。手数料率の高い業種での決済が増えるため、収益性が自然に上がるという構図です。

▶ クレジットカード会社が本当に儲けているヤバい仕組み|加盟店手数料・年会費・リボの裏側

3. 新規会員の獲得

「高級レストランのコース料理が1名無料」という訴求は、単純に強力です。これまでサービスの充実したカードを持っていなかった方や、外食が好きな方にとっては、入会を検討する十分な理由になります。

カード会社のビジネスモデルは、単なる決済手段から、付加価値によって顧客を獲得しLTVを上げるものへと変化してきました。グルメ特典はその象徴のような存在です。

本当に得する形でグルメ特典を使うコツ

最後に、現役社員の目線でお得に利用する方法をまとめます。

ステップ1:対象コースが通常メニューかを確認する

予約する前に、カード会社のサイトに記載されている対象コースと、食べログやレストラン公式サイトのメニューを見比べてください。特典専用のメニューになっていないかの確認です。あわせて、ドリンクの価格が通常のメニューと同じかどうかも見ておくと確実です。

ステップ2:口コミを複数のサービスで確認する

利用したい店舗の口コミは、グルメ系サイトの点数だけで判断せず、Googleマップの口コミも複数件あわせて確認してください。評価の出方はサービスごとに傾向が異なるため、1つのサイトだけで決めないほうが失敗しません。

ステップ3:希望日が対象日かを確認する

前述のとおり、クリスマスや年末年始などは対象外になるレストランが多くなります。予約を入れる前に、その日が特典の対象日かどうかを確認してください。

予約前に確認する3つ/使うべきタイミング

予約前に確認する

ここを飛ばすと恩恵が目減りする

  • 対象コースが通常メニューかどうか
  • ドリンクの価格が通常と同じかどうか
  • 口コミを複数のサービスで確認したか
  • 希望日が特典の対象日かどうか

使うべきタイミング

もともと外食する予定がある日に充てる

  • 記念日
  • 誕生日
  • 接待や大切な会食

「無料だから行く」ではなく「行く予定だから使う」。これが浪費を防ぐ唯一の基準です

使うタイミングとしておすすめなのは、記念日、誕生日、接待や大切な会食です。ポイントは「もともと外食する予定がある日」に充てること。「無料だから行く」ではなく「行く予定だから使う」と考えれば、特典に引っ張られて余計な出費をすることがありません。

もう1つ補足しておくと、カード会社は、グルメ特典を利用しているかどうかも見ています。誕生日や記念日といった節目で使っていれば心証が良くなり、優良顧客と判断される可能性が上がります。何が評価されるのかはクレジットカード会社が優良顧客と判断する使い方5選で具体的に整理しています。

▶ クレジットカード会社が優良顧客と判断する利用内容5選

逆に、特典を使う予定がほとんどないのに年会費だけを払い続けている場合は、カードのランクそのものを見直したほうが合理的です。判断材料はクレジットカードをダウングレードするメリット・デメリットにまとめています。

よくある質問(FAQ)

Q. 無料になった1名分の代金は、誰が負担しているのですか?
A. レストランです。カード会社が肩代わりしているわけではありません。原価率から見れば1名無料でも採算が取れること、平日の空席対策になること、属性の良い新規客を獲得できることなどが、レストラン側が引き受けている理由です。

Q. なぜクリスマスや年末年始は特典が使えないのですか?
A. 空席対策という前提が成立しない日だからです。黙っていても満席になる日は、レストランが1名分を負担してまで会員を呼ぶ理由がありません。特典が使えないのは、店側のメリットが消えている期間だと考えてください。

Q. カード会社はレストランと直接契約しているのですか?
A. 割引・1名無料型については、ほとんどが代理店への委託です。カード会社は会員が使える内容か、ブランドイメージに合うかを見て採用を決めているだけです。一方、ポイント優待型はカード会社とレストランが直接契約していることが多くなります。

Q. 使えていた店が突然対象外になることはありますか?
A. あります。レストラン側から対象除外を申し出てくるケースが実際に増えています。当日のドタキャンや横柄な態度の利用者が続くと、属性の良い顧客を獲得するという前提が崩れるためです。

Q. グルメ特典を使うと、カード会社からの評価に影響しますか?
A. 影響します。カード会社は特典の利用状況も見ており、誕生日や記念日といった節目で使っている会員は心証が良くなります。利用額と継続年数が高い傾向にあることも、社内のデータから見て取れます。

まとめ

  • グルメ特典は代理店主導で作られている。 割引・1名無料型はカード会社が専門代理店に委託して運営しており、カード会社は胴元ではありません。
  • 「1名分無料」はレストランが負担している。 原価率、空席対策、属性の良い新規客の獲得、宣伝、ドリンクでの黒字化という5つの理由が揃って初めて成立します。
  • カード会社の狙いはLTV向上・加盟店手数料・新規会員獲得。 手数料を払ってでも付帯させる根拠がここにあります。
  • 予約前の3つの確認と、使うタイミングが鍵。 通常メニューか、口コミはどうか、対象日か。そして「行く予定がある日」に充てることです。

グルメ特典は、正しく使えば非常にお得な特典です。少し背伸びをして高級レストランを利用したい方、記念日にお得に食事をしたい方、外食が好きな方には特に向いています。仕組みを理解したうえで、賢く使いこなしてください。

動画でも解説しているので、合わせてご覧ください。

著者:クレカ業界15年以上の中の人(審査部在籍経験あり)

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